最近の詩へ
       佐藤喜美子詩集
 佐藤さんは、作詩をしばらくお休みしていましたがご自分の現在の心境を言葉に託すことにしたようです。続けて愛読ください。(2017年5月1日)

巣立ち (T君へ)
   あなたが高校に行けなくなって
   学校をやめたと聞き胸つぶれる思いで
   神さまに祈ることしかできなかった私
      あなたの家族から
      この春嬉しい知らせが届いた
      希望する大学に合格したよ
      大学は自宅からはるかに遠く
      飛行機に乗らないと行けない場所だけど
   蝶がサナギからゆっくり羽化して
   大空に羽ばたいていくように
   勇気と強い意志を持って
   ひとりで巣立っていくあなた
   素晴らしいえらいなあー拍手です
      パパもママもうんと心配だろうけれど
      あなたの決断を応援してるそうな
   人生は長いようで短いよ
   青春の日々を精一杯謳歌してほしい


もたれかかっていい
   土手道の傾斜にスイセンの花が咲き出した
   あちらこちらにわさわさと花茎が交わり
   小さな群れとなって花が咲いている
   (だいじょうぶ?助けあって花を咲かそうね)
   うつむきながら互いにささやきあっているようだ
   芳しい甘い香りがそよ風に乗って漂ってくる
      スイセンの花を眺めるたびに思い出す
      恩師の作品スイセンの花の押し花
      添えられたことば『もたれかかっていい』
      心にジーンと響いてくるそのことば
   何事も意地を張ることはよそう
   ちっぽけなプライドは捨てよう
   『もたれかかっていい』
   神さまにもたれかかっていいのだ
   神さま助けてくださいと叫ぼう
   そうしたらきっと神さまが
   私という花を支え咲かせて下さる



ひだまりのなかで
   年が開けひえびえとした日が続いたが
   きょうは風も無く暖かい日だ
   青空には舟の形をした雲も
   ぽっかり浮かんでる
      用水路に沿ったウオーキングコース
      ひだまりのなかのベンチに
      高齢の婦人が座り子犬を抱き
      ウトウトしては微笑んでいる
   近くに目を移せば満開のサザンカの花
   赤く赤く生き生きと咲いている
   寒い冬でもげんきに咲く花だ
      今年はどんな出会いがあるだろう
      後ろをふり向かないで前をみて
      いちにちいちにちを大切に
      主とともに歩いていこう
        ひだまりのなかでほっこりしながら
        感謝しながら軽やかに歩く


十字架を仰ぎ見て
   お赦しくださいますか主よ
   わたしはいま自分が
   何をしていいのかわからないでいます
     どうしようもない切なさ
     担いきれない使命と困惑
     揺れ続けるもろもろの闘い
   わたしの多くの罪を贖ってくださった
   わたしの救い主イエスさま
   あなたの御声が聞こえます
     ワタシはあなたの主だ
     なぜワタシを信じ委ねることができないのです
     信仰はどこにいったのですか
     あなたは神を思わないで
     人のことを思っているのです
   なにも恐れることはありません
   悲しみの涙を喜びの涙に変えて下さる主
   十字架は泰然として今日も輝いています


りんご村から
   (津軽地方を旅して)

   青色の空白い雲がたなびき
   凛と澄みきった空気のなか
   津軽富士の優美な岩木山の麓
   真っ赤なりんごの木々が林立している
     あら素敵あらかわいいなあ
     思わず小さく叫んでしまった
   いっぽんの木に大きな大きな実が
   いくつもいくつもたわわについている
   太陽に照らされツヤツヤひかる
   真っ赤なその素肌に見とれてしまう
     赤いりんごに唇よせて
     黙ってみている青い空
     りんごは何にもいわないけれど、、、
   亡き母の愛唱歌ふと
   心のなかで口ずさんでいた
     一つ一つ手で丁寧に収穫していく農夫
     感謝しながら手を振りつつお別れだ



小窓の向こうで

   小窓の向こうからよたよたと歩いてきたキミ
   窓を覗き込むわたしを認め半べそをかいた
   支援員の手を引きドアを開けろというしぐさ
   ダメダメといわれて涙がとまらない
     元気だったかな かあさん覚えてるよね?
     大声で叫ぶように呼びかけるわたし
     うんうんと頷くキミは 涙をこぶしで拭っている
   かあさん あなたに会いたかったよ
   たくさんご飯たべて元気でいるんだよ
     切なくて胸が痛くて こちらも涙が溢れでる
     51歳になった我が子だけれど 心は幼子のまま
   あっという間に終わる面会時間
   また会おうねと手を振ると
   大きく大きく手を振ってサヨナラをした
   小窓の向こうで消えてゆくキミの姿
     元気で会えたのだから感謝しかない
     自分を納得させながら帰り道を行く


メル友

   外に出ると息苦しさを覚える猛暑
   熱中症警戒アラートにおびえつつ
   冷房の効いた部屋に所在無げに
   引きこもっている夫とわたし
      こう毎日では飽きてくる
      相手の動作がいちいち気になって
      イラつくこともしょっちゅうなのだ
   今朝夫が嬉しそうな声を出す
   13才になった孫の双子ちゃんから
   夫のスマホに初ラインメールが届いているという
   「えっー」わたしには届いていないではないか
      得意げにニヤニヤする夫
      娘に抗議のラインをすると
      孫たちはわたしにも送ったと言ってるという
      よくよく調べると確かに届いていた
   大騒ぎした後で「メル友になれたね」と
   じいちゃんばあちゃんは幸せになりました


種を配る友

   自分の菜園や花畑で収穫したあとの種を
   ボランテイア仲間にせっせと配る友がいる
   個別にきちんと分けられた種は
   野菜の種だったり花の種だったり
      その種の短い説明をする彼女の顔がいい
      種が愛おしくてたまらない表情なのだ
      時にはメモ書きも添えられて
   種は見た目にはとても小さいけれど
   その中に種の遺伝子とビジョンが無限にあり
   摩訶不思議が詰まっているのだ
      さっぱり判別できないわたし
      体験から学んだことを教えてくれる彼女
      聴いただけで立派な野菜や美しい花が
      イメージされて広がる仲間の笑顔
      (もらいたいわあー)あちこちから延びる手
   神のミコトバの種を配る友になりたいものだ
   心で念じながら種を押し頂く


アジサイの花

   今年はアジサイの花にしたよ
   おかあさんが好きそうな色だったから
   この色のアジサイにしたの
      母の日に娘がプレゼントしてくれた
      ガクアジサイの花今も元気だ
      水色と白色と淡い緑のグラデーションが
      見事にマッチングしている立派な鉢植え
   水を切らさないようにし栄養剤注入も試みて
   毎日楽しみつつ世話をしている
   花が終わったら庭に植えよう
   うまく根付いたら来年も花が咲くだろう
      私は母に花など贈ったことなどない
      娘からもらえる幸せをしみじみと思う
   お隣さんの庭にもしとしと雨に濡れながら
   微かに揺れる赤色のアジサイ
      梅雨の季節に似合う花
      創造主の神さまを賛美します



あたりまえ

   キミに会えないのがあたりまえになってしまった
   何十年も2週間に一度は必ず会って
   一緒にランチしていたのにね
   キミはどう思っているのかしら
      この頃はそれさえ辛くて考えぬことにした
      キミに会えていたのはあたりまえではなかったね
      かあさんはあたりまえに毎日すごしているよ
   会えなくなって思いだすキミのお茶目な笑顔
   指さしては笑って笑って笑いころげた
   あたりまえのような日々がなつかしい
      こんなあたりまえはイヤです
      神さまに文句をいいました
      神さまがいわれました
      『どんなことにも意味があるのです』
   あたりまえがあたりまえでないことを
   知ってもらうための訓練かもしれません
      もう少し我慢しようね


あなたの栄光の素晴らしさを

   養老山脈はきょうも綺麗だ
   遠くには残雪を頂く山
   桜の開花宣言も出て
   来週あたりは見頃になるだろう
   わが家の庭では
      水仙やヒヤシンス
      クリスマスローズにパンジー
      色とりどりに咲き乱れ
      精一杯いのちを謳歌している
      空には白い雲鳥も飛んでいく
   遠く離れた国々で起きている戦(いくさ)
   眼を閉じて静かに祈る
   この地上世界を個性豊かにお創りになった主よ
   すべてにおいて違いは宝であなたの作品です
   主よ
   みわざを現わしたまえ
   あなたの栄光の素晴らしさを


オリンピック


   開催に困難な状況はあったけれど
   東京と北京で二年続けてオリンピックがあった
   テレビで選手たちの奮闘ぶりに
   日々胸を熱くして応援した
      競技で勝っても負けても
      選手たちが必ずいう言葉がある
   「沢山の方々のフォローとサポートとを受け
   この場に来れてこの試合に臨めた事に感謝します
   また鍛錬を積みさらなる高みをめざしたいです」
      おごらず高ぶらずあきらめず
      試練から次なる将来に希望を抱く
      アスリートたちの精神力の強さと柔軟さは
      目を見張るほどの多くの気づきを
      わたしに与えてくれた
   オリンピックは終わったけれど
   主はあらゆることをとうして
   私にも次なるステップを語りかけておられる


伴侶

   元旦の朝お雑煮を作っていると
   二階から夫がトントンと降りて来た
   神妙な面持ちで互いに向き合い
      今年もお世話になります
      今年もよろしくお願いします
   無事に新年を迎えた喜びと安堵感
   挨拶したあと思わず笑いあった
   最近めったにいさかいをしなくなった
      洗濯もゴミ出しも気づいた方がやる
      家電の点検と修理と力仕事は夫だけど
      食料の買い出しと料理のメニューは私
      腰にシップを張りあいながら
   お願いしますネとありがとう
   そんな言葉が日常会話となった
   言うまでもなく正真正銘の伴侶なのだ
   神さまがアダムとイブを創造された意味が
   解りかけてきた気がする


祈りながら歩く

   おお寒いと叫んだ今朝
   お昼を食べる頃には暖かくなった
   誰ひとりいない水辺の田舎道
   久しぶりにウオーキング
      カワウやカモが何羽も並んで
      のんびりゆったりと泳いでいる
      澄んだ空光る山脈を眺めていると
      突如切ない思いがこみ上げてくる
   今、この瞬間(とき)
   生死の狭間で闘っている友がいる
   愛する信仰の友のゆくえが気がかりだ
   苦しく荒い息遣いが聞こえてくるようで
      心が千々に乱れ涙が溢れ出る
      イエスさま友を抱きしめ励ましてください
      永遠の国に行ける喜びと平安を
      あなたさまの御力で満たしてください
      歩きながら祈る祈りながら歩く


旅を終えて


   ひょんなことからMさんNさん私とで
   3泊4日間の旅に出ることとなった
   ツアーではないオリジナルの旅
   頭を寄せ合い計画を練り意気込む3人
   ワクワクドキドキしながら出発した
      名所旧跡をめぐり名物料理に舌鼓
      Mさんの別荘のベランダからの
      瀬戸内海の眺望はまさに絶景
      仲間たちの弾丸トークは終わりがない
   新幹線で降りる駅を間違え3人揃って叫んだり
   『携帯がない』と私が大騒ぎし心配させた
   遠くに住む旧友との再会で昔話に花が咲き
   最高に楽しい旅はあっという間に終わった
      アクシデントが起きても
      気にしないで笑い飛ばすパワー
      ばあちゃんトリオはすごいなと我ながら思う
      恵みの旅を与えて下さった神に感謝します


混沌から

   あのひとが悩んでいることを知った
   あのひとの家族も悩んでいることを知った
   家族だからひとりが悩めばみんなが悩む
   わたしにとってとっても大切な
   あのひとやその家族なのに
   遠くから見守ることしかできないわたし
      『こんなとき神さまはねえー』とか
      『試練は誰にでもあるから』とか
      『全てを益に変えて下さる神さまを信じてね』とか
      ストレートにいえないもどかしさといらだち
      心がズキズキ痛む
   混沌から希望が生まれる
   なんて不思議なこと
   富澤先生のことばがわたしに慰めと励ましをくれる
      祈って待ち望んでいこう
      混沌から希望が生まれる
      元気な家族に再生出来ることを願って


フランス刺繍のメッセージ

 ラジオ伝道牧師が語った
      心に残るメッセージ

   ぶらり入った 店の奥で
   おばあちゃんが メガネかけ
   フランス刺繍をしていた
      丸い輪っぱの 布の裏
      赤 白 青 黄 緑
      多彩な糸が 縦横無尽に走っていた
      これはいったいなに
   おばあちゃんが つぶやいた
   「ああー やっと できあがり」
      丸い輪の布の表を覗いて驚いた
      美しい風景画が 描かれていた
   生きるということ
   布裏の糸のごとし
   あっち こっち なんのことやら
   わけがわからぬ ことばかり

      それでも みなさん

      あなたが 人生を終える時
      いっぷくの 風景画が描かれている
      あなたの 人生の風景画
   フランス刺繍のメッセージ
   いまわかるそのメッセージ
   
     噛みしめながら 生きています


可愛い子ちゃんリリー

   夏の盛りで気分が滅入る日々
   5年ぐらい前からとつぜん雑草の中より咲く花がある
   種や苗を植えた記憶もない花だ
   いつもは忘れているが今年は楽しみにしていた
   見かけはミニチュア版の百合の花
   ことしも勢いよくオレンジの花を咲かせた
      正式な名前は知らないけどわたしは密かに
      可愛い子ちゃんリリーと名前をつけた
      スマホで撮って何人かの友にその写真を送った
      誰もが初めて見る花だという
      そのなかのひとりが花の名前を調べてくれた
      正式名は『キツネノカミソリ』だという
      気に入らない名前だった
   わたしはその名前は却下した
   わたしの庭では(可愛い子ちゃんリリー)でいこう
   暑い夏くたばっている時勇気づけてくれる花よ
   可愛い子ちゃんリリーありがとう
                      


きょうはあなたの誕生日

   きょうはあなたの誕生日
   50才になったのね
   あなたの好きなケーキを御馳走して
   あなたの喜ぶ笑顔をみてお祝いしたいが
   互いに会えないさびしい誕生日
      あなたの生まれた日から今日まで
      走馬灯のようにさまざまな日々が蘇ってきます
      泣いたり笑ったり苦しんだり悩んだり
      現実の世界のなかでちいさな喜びや幸せを
      必死で拾い集めて生きてきた
   納得できない混沌とした人生だったけれど
   あなたを通して神さまに出会いました
   あなたはわたしの大切なこども
   あなたとわたしのそばにはイエス様
   イエス様がおられる
   全てを御存じで全てを導いて下さるお方
   感謝して信頼して歩んでいこうこの世の旅路を




   『ほれ実がなったぞ』
   赤いミニトマト青紫色のナスビ緑色のピーマン
   両手にいっぱいの収穫物輝く夫の笑顔
   朝いちばんで取ったものだ
    ミニトマトはそのままかぶりつき
    ナスビはお味噌汁に
    ピーマンはきんぴらに
   新鮮でかくべつに美味しいね
   我が家で取れたものだから
   今朝は会話がどんどん弾む
      小さな庭を一生懸命に耕し
      肥料を入れ混ぜ畝を作り
      苗植えて支柱を立て
      毎日毎日世話をした
   でも
   成長させて下さったのは神さまです
   神さまに感謝します


かあさんの花 紫露草

   梅雨に入り雨続きでうんざりだけれど
   ひとつだけワクワクする楽しみがある
   (花の色が素敵なのよ)
   かあさんが笑顔で株分けしてくれた
   紫露草 かあさんの花
   ことしも蕾がたくさんついて
   いつ花が咲くのかまいにち眺めている
      わたしが育児に悩み大声で泣き叫んだ時
      わたしの両手を力いっぱい握りしめ
      はらはらと涙を流しかあさんは言った
      (わたしの余生はあなたを支えるために使いたい)
      全力で私を支え65歳で逝ったかあさん
   かあさんの花は今年も変わらず元気だ
   かあさんのことばもずっと心のなかで
   今も生きて私を支え続けている
   かあさんの花いつ咲いてくれるかな


庭で

   ネコの額ほどの我が家の庭
   3分の1は夫の領分 3分の1は私の領分
   あとの3分の1は共有スペース
      夫は野菜を作るとかで土づくりに精をだす
      固くなった土を掘り起こし肥料をいれ
      何日か寝かせて畝をつくりながら
      この列はミニトマトこの列は茄子とピーマン
      ブツブツ独り言をいいながら汗をぬぐっている
   私は春の草花の点検に目を凝らす
      40年を経たツツジが満開で華やか
      すずらんが楚々として咲きシランの花もかわいい
      シンピジュームも沢山のつぼみで楽しみだ
      こぼれ種からあちこちにノースポールの花
      朝昼晩と庭を見回っては花々を愛しく思う
   神さまが与えて下さった
   慰めと恵みの素晴らしい世界の中で
   知らず知らずのうちに感謝の心が生まれる


木蓮の花の咲く頃


   嫁ぐ前実家の庭には
   紫木蓮の大木があった
   春めいてくると次々と
   華やかに花びらを広げて咲いた
   大空に向かって背伸びするように
   その姿を眺めるのが好きだった
   じっとみつめていると
   力強いエネルギーが伝わって
   元気を貰える気がした
   ふと気づくと
   母がわたしの傍に立っていた
   黙ってただ見つめていたふたり
   そんなことが何回かあった
   実家も無くなり母も逝っていないけれど
   木蓮の花が咲く頃いつも思う
   母はこの花を
   どんな気持ちで眺めていたのだろうか


元気でいたならあえるから

   あえなくなって半年以上
   施設から電話がないのは
   無事でいる証拠
   そういい聞かせて過ごしてきた
      ある日何枚か写真がとどいた
      どの写真を見てもあなたの眼
      さびしげでかなしげで
      じっと耐えてるようで
      いつもの笑顔がみられない
   なぜあえないのかわからないものね
   しゃべれないから聞けないものね
   かあさんはせつなくて心が痛い
      いまは互いに元気でいること
      そのことだけを願って
      神さまに祈っているよ
   きっといつか必ずあえる
   元気でいたならあえるから


時が良くても悪くても


   新しい年があけた
   水色の空に白い雲が浮かんで
   遠くに連なる山脈には雪もちらほら
   冷たい風が頬を刺し痛い
   小川や田んぼには白鷺や雀が群れて
   凛と咲く生垣の赤いサザンカ
      新年になると不思議だ
      いつも眺める景色が違って見える
      生かされている幸せと感謝
      主の恵みをいっぱい感じて歩く
   今年になって思う
   怖いのは未知のウイルスだけではない
   己の心がぐらつき萎えること
      みことばを宣べ伝えよう
      時が良くても悪くても
      主が私にして下さった愛のみわざを
      しっかりせねばと胸を張る


クリスマスを迎える前に思う

   たくさんの苦しみの中から
      まことの喜びが生まれ
   たくさんの哀しみの中から
      まことの幸せが生まれ
   たくさんの怒りの中から
      まことの慰めが生まれ
   たくさんのたくさんの血を流して
      まことの愛が生まれる
   ああーイエスさま
   親愛なるイエスさま
   あなたが流された血の涙をほんの少しだけ
   かいまみたような気がします
   あなたが私のために
   かかってくださった十字架
   深く心にとどめおき
   熱き思いのたぎる今宵です。


ゆずりは

   秋風に吹かれて歩く公園
   木々の葉っぱがハラハラ落ちてくる
   明るい陽射しをあび光りながら
      赤 黄 橙 茶 黒
      おもいおもいに染まった形で
      くるくるダンスしている
   「ゆずりは」のことばどおりに
   新しい葉にいのちをゆずって
   未来へと希望を託して
      ひとつの使命を終えた姿
      なんと綺麗なことだろう
      そっとそっと拾い集めて
      頬ずりするわたし


摩周湖にて

   何十年ぶりだろう
   再びここに来れたなんて
   まったく夢のよう
      世界第二位の透明度を誇る湖
      息をのむ美しさ麗しさ
      濃紺の摩周ブルーの悠久なる姿
      ちっぽけな私の悩みなど
      あっというまに溶かして沈めてしまう
   心穏やかにたたずみ
   いままでの人生を振り返る
      ああなんと神の憐みに包まれて
      恵みの多い旅(人生)であったことか
      感謝があふれ賛美があふれ
   熱い思いと祈りは
   真っ青な天へと昇っていく


かあさん

   わが家の庭で秋桜が咲いた
   涼風にゆれながら
      ああやっと咲けたと
      そのつぶやきが聞こえそう
      母が好きだった花
   兄から電話がはいった
   昔話が次々と飛び出したところで
      兄がとつぜん涙声になっていう
      あなたはかあさんに似てきたなあ
      優しかったかあさんにそっくりだよ
   顔のシワは同じところにあるよ
   笑って応えたが私も胸が詰まった
      終戦直後の混乱の中必死で
      乳飲み子の私の命を守りぬいた
   かあさんかあさん
   あなたに似てきたのなら嬉しい
   あなたの遺伝子が私の中で生きているのですね


廃家に立ち

   ここで家族が住んだ
   泣いたり笑ったり黙ったり
   たくさんのおしゃべりが飛び交い
   まいにち生活の営みがあった
      助けたり助けられたり
      家族という名の慰め励まし
      大切な絆がここにはあった
   五葉松の緑が生き生きとし
   紫モクレンの花が綺麗に咲き
   柿の実がたわわに実り
   四季の草花が嬉々として咲いた場所
      一人去り二人去り三人去り四人去り
      父さんも母さんも去って
      ここにはだあれも居なくなった
   廃家に立ち感謝と賛美をしよう
   神のなさることはすべて時にかなって美しい
   神はまた人の心に永遠を与えられた


それが祈りです


   わが家でとれた初なりのスイカよ
   あなたに食べてもらいたかったの
      彼女に手渡されたスイカは
      ずっしりとして重たかった
   わたし元気になったでしょ
   祈ってくれてありがとう
      小麦色の肌笑った目元に
      うっすらと涙が光ってみえた
   半年前わたしもうダメかもしれない
   病室でさめざめと泣いた彼女
   こんなに元気なって現れるとは
      祈りは隣人を生かします
      祈る人のわざではなく
      神のわざをみせていただく恵み
      それが祈りです
   師のことばがふかく
   こころにしみ込んでゆく喜び
        

15分のドラマ

   やっとあえることになった
   4か月経ってやっとこさ
   たった15分だけど
      玄関で体温チェック面会ノートを書き込み
      落ちつかないわたしの心
   現われたあなたは
   目を丸くし口を開け笑った
   距離をとり差し向いに座った途端
   目を真っ赤にして声もなく泣いた
      元気で良かった良かった
      わたしはたくさん語りかけた
      許されたジュース1本さしだすと
      いっきに飲み干し満足気に笑った
   あっという間に15分またあおうね
   あなたはまた泣き顔になり頷き手をふった
   笑ったり泣いたりまた笑ったり泣いたり
   こうして15分のドラマは終わった


バラの花

   バラの花を贈られたことはない
   自分で買ったこともいちどもない
   バラは美しい人に似合う花
   勝手にそう思い込んでいた

   けれども花屋で
   しぜんに手が伸び買ってしまった
      真っ赤に燃えるような赤いバラ7本
      大事に抱え急いで帰宅
      気に入りの花瓶に投げ入れ
      狭い玄関に飾った
   なんとまあー華やかでいいじゃないの
   胸がドックンときめいて大声が出てしまった
   コロナの憂うつがいっぺんで吹き飛んだ
      野の花もいいけれどバラの花もいいねぇ!
      バラの花を愛でるひとの気持ちがわかった


ははこぐさ(母子草)

   会えなくなってふたつき以上
   朝な夕なにキミを思う
   笑顔いっぱいのキミの動画を再生しては
   胸がキュンキュンしてせつない
      理由(わけ)がのみこめないキミ
      どうして父さんや母さんに会えないのだろうか
      心の中で繰り返し思ってるだろうか
      それとも 何も思わず過ごしているのかな
   そんなとき
   新聞に載った暮らしの作文 ははこぐさ(母子草)
   あったあった我が家の庭のあちこちに
   何気なくたくさん咲いている
   名前を知らなかった草花だけど
   いちだんと愛おしくて大切にしている
      花言葉は 無償の愛 いつも思う
      母さんの思いよとどけキミに
      あなたを決して忘れていないからね


きょういちにち何をしようかな?

   コロナウイルス感染症が広がり
   全国に非常事態宣言が出され
   私も巣ごもり状態になった
      礼拝メッセージもライブ配信とやらで
      動画を見ての個人礼拝となる
      心を集中し静まってみ言葉をかみしめる
      やってみればなかなかいいものだ
   しばらくして友より
   礼拝後の分かち合いのメールがはいる
   顔をみて話したければスマホで
   リアルにビデオトークもできる
   すごい世の中になったものだ
      ため息つきながらも笑って励ましあう日々
      落ち込んでばかりもいられない
      今だからこそできることもあるはず
   さあープラス思考でいこう
   きょういちにち何をしようかな?


澄子さん

   もの知りで何においてもセンスが抜群
   優しい口調に穏やかな笑顔
   品のいい物腰はわたしの憧れだった
   澄子さんが逝ってしまったなんて
      今でも信じられないわ
      ときおりあなたから贈られてくる
      押し花を配した手作り葉書きには
      いつも私を励ますみことばが書かれていた
      あなたの労作が家のあちこちに飾られています
   わたしにとってあなたは
   信仰と祈りを共有でき互いに
   霊性を高めあう仲の真実の友でした
      あなたの最後の電話は
      「主われを愛す」の賛美でしたね
      わたしへの有形無形のプレゼントをありがとう
   涙を拭いて笑顔でサヨウナラ
   天のみくにで再びあえるその日までサヨウナラ
   松下澄子作


ドーンと構えて生きていこう

   膝や腰が痛くて休んでいた庭の見まわり
   久々にしゃがみ込みじっくりみたら
   あちこちで草花の新芽が出ている
   小さな蕾をつけている花もある
   冬の間じっと力をためこんでいた生命が
      春に向かってググッーと
   押し出されて来たのだ
   時を忘れずに動き出すパワー
   愛おしくて声をかけたくなる
   「がんばってるね」と
      人間界で起きている騒ぎには
      耳を覆いたくなるけど
      自然界も人間界も
      神さまが全てを支配され
      みこころを成されるのだから
   ドーンと構えて生きていこう


大波のように神の愛が


   長年の友人から電話が入った
   入院してるの見舞いに来て
      病室の戸を開けると友は涙ぐんだ
      難しい病気にかかって検査検査の日々
      まだ治療方針は決まってないの
      互いの人生を振り返り久々の語らいは
   涙あり笑いありしんみりと長く続いた
   私の信じている神様に祈ってもいいかしら
      おおきく頷いた友は嗚咽(おえつ)し始めた
      祈り終えると突然涙をふきふき歌いだした
   大波のように神の愛が
      私の胸に寄せてくるよ
      漕ぎ出せ漕ぎ出せ世の海原に
      先立つ主イエスに身を委ねて
   あなたが行っている教会で覚えたのよ
   主イエスに身を委ねていかなければね
   晴れやかな顔で友はいった


新年が始まった

   キミを迎えに行くとキミは大泣きした
   やっと来てくれたのかといわんばかりに
   「ずっと待っておられたので」という支援員さん
      車が家に到着するとにっこり
      キミは玄関めがけて猛ダッシュ
      ドアノブを力いっぱい引っ張り
      母さん遅いよという顔で振り返る
   あたふたと家に入ると
   菓子箱をのぞいたり冷蔵庫を開けたり
   好きなものをチョイスしてはにんまり
   ゲラゲラ声高に笑う
      コタツにもぐり込み
      飲んだり食べたり寝転んだり
      小さなコタツには父さんとキミと母さん
   6本の足がぶつかりあって
   のんびりゆったり笑顔笑顔笑顔
   ありがとうの感謝で新年が始まった


孫との会話

   ばあちゃんもうすぐクリスマス
   サンタさんがやってくる日だよねぇ
      目をくりくりさせながら
      10才になる孫がいう
   クリスマスの本当の意味を知っている?
   クリスマスはねイエスキリストという
   神さまの子供が生まれたことを祝う日だよ
      わたしは仏教徒だからわかんない
      ばあちゃんはキリスト教を信じているの?
   怪訝(けげん)そうな顔つきで尋ねる
      ばあちゃんはクリスチャン
      苦しい時悲しい時困った時
      イエス様に救ってもらったの
      そして生きる勇気を頂いたの今もね
   ふーんそうだったんだ
      クリスマスを祝いに教会に一緒に行こうよ
   「また考えとくわ」と孫はケラケラ笑った


心を正して静かに祈る

   突き抜けるような青空
   おひさまがピッカピカに光ってる
      養老山脈の山肌も木曽川の水面(みなも)も
      紅く染まり始めた木立も
      秋風のなかで生き生きと映える
   広々した芝生広場のある公園
   遊具を昇り降りしながら
   大声ではしゃぐ子等の姿
   どの子も笑顔がはじけてかわいい
      恵みに満ちた時が流れていく
      己の心を覗くと
      なんと雑念が多いことだろう
      心を清めたまえと
      心を正して静かに祈る


秋桜

   朝夕めっきり秋めいて
   涼風が顔に心地良い
   小さな庭のあちこちで
   うす紅 白 ピンク
   こぼれ種から芽生えた秋桜が
   優美に花を咲かせて
   ゆらゆらと揺れている
      真夏の日照りも 恐ろしい台風も
      やっとこどっこい乗り越えて
      折れそうな姿そのままで
   「大好きな花は秋桜よ」
   少女のようにはにかみながらいった
   在りし日のかあさん
      静かに秋桜を眺めていると
      あなたの気持ちがわかる気がする
      だってわたしは
      かあさんの娘ですから


きみの涙

   きみのいる施設に用事で出かけた
   大勢の人々が集会室でたむろしていた
   きょろきょろしてきみを捜す
   いたいた部屋の片隅で 
   むっすっとして体操座りをしてる
      やっと気づき目を丸くして
      遠くから私を見つめている
   近づき手を取るとみるみるうちに
   きみの目が真っ赤になって
   おおつぶの涙がこぼれ落ちる
      かあさんに会いたかったのね
      また明日あいにくるよ
      そうしたら一緒に外に出かけようね
      きょうは母さん帰ります
      力強く両手を握りしめ言った
   おしゃべりできないきみが小さく頷き
   ちぎれるほど手を振った
   手をちぎれるほど振った


問答

      さいきん仲良くなった友が
      真顔でわたしに問いかける
   あなたの詩感動で胸が震えます
   わたしはこれまで何度も
   じぶんの人生を呪いました
   しかしわたしの苦労は
   あなたに比べて取るに足りません
   どうしてそんなに前向で生きていけるのですか
      わたしは少し笑いながら応えた
   いちどきりの人生を
   みじめで可哀そうな人のままで
   終わりにしたくないと思いませんか
      どんな人の人生にも価値と意味があり
      役割と使命があると思うのです
      わたしの使命と役割は何かしらと
      神に問い模索しながら生きています
   友は大きく頷いて「納得」とつぶやいた


手編み

   不器用な私が気まぐれに始めた手編み
   デザインや糸や色等々を選び
   ゲージを取り製図も書き目かずや段数を計算で割り出し
   カギ針にするか棒針にするかを選び
   それからイメージを思い描きながら編み始める
      ゆるく編んだりきつく編んだり
      目を落としてしまったり段数を間違えたり
      ひとめかふためでも違ってくると
      ひきつれができてきれいにならない
   編んではほどきほどいては編むの繰り返し
   気の遠くなるような作業が延々と続く
      教室はベテランぞろいの生徒さんばかり
      高齢者で覚えが悪い新入生の私
   80代の先生がため息まじりで笑いながら言った
   あなたは習いに来るのが30年遅かったね
   でも、何回ほどいてもまたそこから編み始めればいいからね
      人生と同じかもねチャレンジをもう少し楽しもう


義母(はは)

   最後の最後まで笑顔でちゃんと
   わたしの名前を呼んでくれた義母(はは)
   103歳と9カ月 天寿を全うし
   しずかにしずかに逝った
      バスの中で わたしを見染めてくれて
      夫との出会いをつくってくれた人
   義母(はは)の愚痴をいちども聴いたことがない
   「いつもありがとう」が口癖だった
   何事もみごとなまでにプラス思考
      戦禍の中をくぐり抜け
      6人の子を育て上げ
      厳格な父に忠実に仕えた
   外国旅行にもステーキハウスにも
   連れて行けず ごめんね おかあさん
      おかあさんの生きざまをしっかり
      心に刻んでこれからを生きていきます
   いっぱいいっぱいありがとう おかあさん


めんそーれ 沖縄


      人魚姫がぬっとあらわれそうな
      エメラルドグリーンの海
      強い光のなかで神秘的に輝いている

   みなさま めんそーれ 沖縄
   ガイドさんが笑顔で迎えてくれた

      ハイビスカス シイサー 島唄
      エイサー さとうきび畑 首里城
      むかし琉球王国と呼ばれた情緒豊かな南の島

   悲しい戦い(いくさ)の歴史と傷跡
   いまも問題を抱えて闘っている沖縄
   すべてを混ぜ合わせ呑み込んで
   人々は明るく逞しく生きていた

      わたしは旅人にすぎないけれど
      沖縄を身近に感じ思いを深くした


月見の森にて

   どこを眺めても見渡す限り若葉
   濃淡の緑が鮮やかに映える
   空はすこしモヤがかかってブルー

      高低差のある森の中を
      歩を確かめながら根気よく進む
      たまに山藤やツツジも咲いて
      すり抜けていく5月の風が心地よい

   やっと着いた山頂から下界を見下ろすと
   自分は日々なんと小さな領域で
   くよくよしながら生きているのかと
   あらためて思い知らされる

      天と地とその中にある一切のものを
      創造された創造主を崇め
      胸いっぱいに賛美しつつ下った


青空と桜と笑顔と


   ぽかぽか陽気で満開だった桜
   きょうの真冬のような寒さで
   ぶるぶる震えているだろう
      残り少ない灯油を注ぎ
      ストーブをつけて暖をとる

      ふと
      きのう桜見物をしたときの
      キミの動作が思いだされて
      じんわりと心も温まる

   ほら
   桜を見上げてごらん
   きれいだねえ

      かあさんの声かけに見向きもせず
      大好きな食べ物を
      つまんではほおばり
      つまんではほおばり
      にこにこ満足な笑顔だったキミ

   今年も一緒に桜を見れたね
   お互いに元気で感謝
   神さまの恵みに包まれて

      青空がきれい
      桜がきれい
      笑顔がきれい

   青空と桜と笑顔と


花のようになれたらいいな


   春めいてきて庭に出るのが楽しくなった
   催花雨がたまに降ってあちこちで
   草花の芽がグングン伸びてきて驚きだ

      昨年楽しみに植えたチューリップと水仙
      北国のじいちゃんにもらったスズラン
      父母の思い出シランとムラサキツユクサ
      心が落ち着くよと友がくれたハーブミント

   ワタシハ寒い冬を乗り越えて生きているよ
   花を咲かせるまでがんばるからね
   そういっているかのようで
   ひとつひとつの花が愛おしい

      花はただひとつのおもいに一途だ
      わたしも余分な雑念を思い切り捨てて
      花のようになれたらいい


天気予報

   朝起きてテレビをつける 先ず見るのは天気予報
   ひょろ長い日本列島 全国の天気がひとめでわかる
   自宅付近の天気をすぐにチェック
      雨の降る時間帯も細かく表示してあり
      これがよくあたり 便利この上ない
   それから 友人知人の住んでいる場所の天気をチェック
   ああーあの人の地方は晴れ あの人の所は雪なんだと
   その人々に思いを寄せて 短く祈る
      子供のころ 遊び疲れて家路を急ぎながら
      足を蹴り上げ 靴や下駄を放り投げて
   「あーした天気になーあれ
   表返しは晴れ 裏返しは雨だよ」と
   真顔で友と予想しあった話は
   むかしむかしの物語になった
      今は便利を手に入れたけど 少し味気ないな
      でもね 色々リアルタイムで
      計画実行できる幸いを感謝しよう


新年

   新年を迎えると
   見慣れた公園でも
   見るもの全てがフレッシュだ
      きょうは小春日和
      降り注ぐ陽射しが柔らかい
      野良猫ものんびりひなたぼこ
      少女が子犬を連れて大はしゃぎ
      水仙もタンポポも生き生き
      誇らしげに咲いている
   元気で新年を迎えられ感謝だね
   子供たち孫たちも元気で良かったね
   先きを行く夫が振り向きざまにいう
      そうだねえー笑顔で応えつつ
      この年もふたりで
      ケンカと仲直りを繰り返しながら
      互いに支えあっていこうね
      心のなかでつぶやきながら歩く


聖なるあきらめ


   信仰の友より便りが届いた
   彼女はたくさんの病を抱えている
   家事もできず殆ど外出も出来ない
   思うように動かない手で
   精一杯心を込めて書いた便箋2まい
      彼女の今年の流行語大賞は
      聖心会シスター鈴木秀子さんのことば
      「聖なるあきらめ」だそうだ
   前向きにあきらめること
   物事に執着しない諦(あきら)め
   物事を明らかにする明らめ
      究極の聖なるあきらめを
      人となって身をもってしめしてくださったのは
      イエス様なのだとわたしは思わされております
      みこころのようになさってくださいと祈られた御姿を思います
   彼女の文面が心にしみていく深くしずかに音もなく
   真っ赤なシクラメンを眺めながら
     


枯れ葉

   光のなかをひらひらと
   枯れ葉が舞い散っている
   そっと そっと
   何枚か拾い集めた
      赤 黄 橙 緑 茶
      いちまい いちまい
      色の見事なグラデーション
      ひとつとして同じものはない
   きれいだね おばちゃん
   わたし これ
   ママへのおみやげにするの
      かわいい声に振り向くと
      小さな女の子が
      両手にいっぱいの枯れ葉
      大事そうに抱えている
   ふたりで微笑みあって
   頷きながら別れた


秋の公園で

   イナゴがぴょんと跳ねて
   バッタがぴょんぴょん飛んで
   大きなカマキリがにょっきり顔だした
      ほらほらほら見てごらん
      指さしながらきみを誘ってみたが
      きみの目はあらぬ方向をみて
      ただただ笑っているだけ
      けらけら声だし笑っているだけ
   まあ、いいとしよう
   何はともあれ
   きみはすこぶる元気
      ススキの穂がゆれて
      小鳥たちがさえずり
      澄んだ空には白い雲
   神さま感謝します
   親子で過ごす幸せなひとときを


鰯雲(いわしぐも)

   猛暑でこの身が
   溶けてしまいそうだった夏
   はっと気づくと
   涼しい風が頬を撫でている
      ヒガンバナ コスモスが
      あちこちに咲きだして
      手が届きそうな周りを
      赤とんぼが群れ飛んでいる
   この山里にも確かに
   秋が巡ってきたようだ
      夏が越えられなくて
      亡くなった友を思う
      涼しくなったら
      必ず会おうと誓っていた友よ
   せつなくて せつなくて
   見上げる空に 鰯雲


全員集合


   夫婦ふたりきりの我が家が
   全員集合で久しぶりに賑わった
      息子一家4人 娘一家5人 そして私たち
      5歳から76歳まで 総勢11人
      狭い部屋はぎゅうぎゅう詰めで
      てんやわんやの大騒ぎ
   朝から夜まで
   床が どんどこどんどこ ドタバタドタバタ
   おしゃべり ピーチクぱーちく
   ゲーム トランプ マジック ビンゴゲーム
      泣いたり 笑ったり 怒ったり
      ほらご飯 ほら水分補給 ほらおやつタイム
      目が回りそうな忙しい一日も
      夕食終えたら さよならのハイタッチ
   全員元気で会えて良かったなあ
   豆台風が去っていったような
   静けさと安堵感が戻ってきた


緑のカーテン

   ゴーヤを植えた
   長い2本の支柱を立て
   夫と協力してネットを張った
       朝夕 水やりをし
       親ヅルの摘心 ツルの誘導
       肥料も与えて
       こまめに 観察世話をするのが
       日課となった
   不思議な神秘の力で
   知らない間に成長している
       感動だなあ〜
   花がつき 実の形ができてくると
   早く大きくなってねと
   語りかけている
       子育てといっしょだなあ〜


そんな気持ちになった

   重度心身障害児施設を
   創設された方のことば
      ひっそりと輝く命がある
      尊い光を放つ子らがいる
      この子らに世の光を
      ではなく
      この子らを世の光に
      である
   忘れられないそのことば
      愛とは
      弱者を憐れむ心ではない
   自分も弱い者だと認め
   その弱さを素直に受け入れ
   互いに命を支えあっている者どうし
   同じ人間だと解ること
      愛とは
      神から頂いた命の尊さ輝きに
      気づくことではあるまいか
   気づきをみつめ理解しようとする力
   自分に何ができるのかと考える強い思い
      愛とは
      そうしたいと願う意思なのだ
   一日を終えようとしている夜
   座って瞑想をしていると
   そんな気持ちになった


主を待ち望む者は

   5月のほどよい風に吹かれて
   気ままに歩く
      桜が咲いては散り
      チューリップが咲いては散り
      藤が咲いては散ってしまった
   花のいのちのなんと短いことか
   人のいのちもまた儚いものだ
   わたしも老いを増してきている
   心はちぢに乱れる
      突然携帯のメール音
      お誕生日おめでとう
      主にあって
      またひとつ若くなりましたね
      友からのひとことが私の胸を熱くする
   そうだわたしは主の民
   主を待ち望む者は新しく力を得
   鷲のように翼をかって上ることができる


ベトナムを旅して

   久々の海外旅行 不安と期待を抱えて出発
   ハノイ フエ ダナン ホイアン ホーチミン
   南北に細長く湿度の高い国 汗をふきふき
   ツアー仲間に置いてきぼりにされぬよう
   必死に追いかけながらついて回る
       スタイル満点のアオザイ姿の女性に見とれたり
       道路を縦横無尽に走る
       バイク バイク バイクの群れに
       驚きの声を張り上げスリル感を味わう
       田畑で手にて種まきをする農夫に胸を熱くして
       日本の原風景に思いを馳せた
   今は決して豊かではない国 ベトナム
   けれども 人々は幸せを求めて
   ひたむきに逞しく生きている
   感慨深い旅となった
       帰宅して眺めた 満開の桜
       やっぱり にっぽんはいいなあ


うららかな春が待ち遠しい

   立春が過ぎてもたまには雪もちらついて
   寒いねえーが合言葉
   昨年暮れに植えたビオラが花びらを震わせている

      暖かくなったら旅に出よう
      桜の名所見物もいいな
      寒風の中歩を進めながら
      春への思いが募っていく

   ふと垣根に目をやれば
   小さな硬いツボミをつけた
   花の木を見つけた

      まあいじらしいこと
      思わず笑みがこぼれた
      うららかな春が待ち遠しい


雪のように真っ白にして


   新しく年が明けると
   見慣れた景色も吸う空気さえも
   全てが清々(すがすが)しく
   新鮮に思えてくるから不思議

      昨年は良いことも悪いことも
      たくさんあったけれど
      もう過ぎ去った年
      きれいにリセットしよう
      そっとつぶやいてみる

   チュンチュンチュン
   ピツーピツーピツー
   応援してるからねー
   小鳥たちがさえずりながら
   朝日の中を飛んでいく

      心を
      雪のように真っ白にして
      前だけを向いていこう


グッドニュース

   ふらりと立ち寄った店
   きらびやかなクリスマスツリーが飾られ
   赤いリボンで結ばれたプレゼントの数々の品
   賑やかなクリスマスソングが流れている
   本当のクリスマスはどこに行ったのか
   ああーとため息がもれて
   思わず立ち止まってしまうわたし
   粗末な馬小屋で誕生された
   神の御子イエス様 救い主
   にっぽんじゅうの何人が
   その意味を知っているだろうか
   嘆くまい 嘆くのはよそう
   今こそ 本当のクリスマスを伝えるその時だ
   堂々と伝えよう グッドニュース


ありのままに

   狂おしいほどの夏が過ぎて
   駆け足で秋がやって来た
   たわわに実った稲穂が
   秋風にもてあそばれてうねっている
   春夏秋冬
   季節の移り変わりの速いこと
      辛いこと嬉しいこと気になること
      泣いたり笑ったり怒ったり
      人の世の喜怒哀楽もまた
      めまぐるしく変化する
   風を追うようなものだ
   ソロモンのことばが
   静かにこころにしみてくる
      主がわたしに下さる分(ぶん)を
      恵みを感謝して
      生きようありのままに


小さな庭で

   朝目が覚めてすぐ 突っかけを履き庭に出る
   朝顔が6つ7つ咲いている
   ピンク ブルー ホワイト
   指さしながら 心楽しくなっていく
   半日でしぼんでしまう花だけど
   花びらを精いっぱい広げて
   一瞬のいのちを 輝かせている
        緑色赤ちゃんガエルが足元に乗り
        茶色トカゲも目の前を横切っていく
        もわぁーとした暖かな空気の中で
        新聞を小脇に抱え
        小さな庭でたたずむ
   さあー 今日いちにち何をしようかな
   深呼吸をして見上げる空
   主よ 今日のわたしのいのちを感謝します
   今日なすべきことを教えてください
   短い祈りとともに一日が始まった


かすみ草の花


   地上に色とりどりの花が咲くのは
   神さまからの贈り物
   どの花も個性ゆたかに
   せいいっぱい咲いている姿は
   大いなる慰めと励まし
   ときおり花屋を覗いては
   あの花この花向こうの花
   つぎつぎに選んで花束にする
   最後には決まってかすみ草の花
        いっぽんかにほん
        そっと添えてやると
        ぱぁーと夢空間が広がり
        明るく華やかなフンイキが漂う
   かすみ草の花は地味だけれど
   他の花を生かしながら大きな存在感を示す
   不思議な力を発揮する花
   私もそんな役割を持てたらと強く願った日


主のまなざし

   麦の穂が優しい風に揺れている
   田んぼにも水が入ってカエルの合唱が始まった
   母が株分けしてくれたムラサキツユクサの花
   可憐に今年も咲いた
   40年の時を超えてなお
      泣きながら迷いつつ
      望みを無くしてへたばり
      座り込んでしまう
      そんな日々もあったけれど
      いまここにある平安を思う
   わたしはどんなときにも
   ずっとあなたとともにいた
   声なき声が迫ってくる
   目には見えないけれど確かに
   わたしに注がれている
   温かな主のまなざし


かぞえてみよ 主のめぐみ

   はっきりした理由(わけ)もないのに
   つぶやきばかり多くなり
   日々の暮らしが所在ない
   その自分に愛想がつきて
   力なく石ころをけってみる
   もしかして 高齢期のウツかもしれぬ
   大きく深呼吸しながら 見上げる空
   どこまでも 広々としてはてしない
   地上に目をやれば
   色とりどりの草花たちが
   春の光の中で ひらめきあっている
   ああ わたしは生かされている
   わたしは まだまだ元気
   数えてみよ 主のめぐみ
   ひとつずつ ひとつずつ
   数えるごとに増す感謝

佐藤喜美子 詩集(2012年)
私には、3人の子供がいます。
次男、長女は結婚もして子供もありますが、
長男は最重度の心身障害者で(出産時の後遺症)まったく、
言葉もいえず、知能指数も2歳もありません。
何度かこの子と共に死を考えましたが、
現在はこの子を与えられたことに感謝しています。
悩みの基であったこの子が、
今や我が家の祝福の基となっています。
この子をとうして、
神さまの存在と栄光を仰ぎ見ることができていると信じています。




   

   
           

春がきた


   空には ひばり
   木には うぐいす
   地には 菜の花

        温(ぬく)もりのある空間を
        蝶が 二つ 三つ
        優美に舞っている

   野道をゆけば
   色とりどりの草花たちの
   いぶきが 伸びやかだ

        あっち こっちで
        春をよろこぶ 歌が聞こえる

   ああ、なんと
   この地球(せかい)の麗しいことよ

        ぽかぽか陽気に誘われ
        ぶらり
        散歩を楽しむ公園

   あなたの輝く笑顔をみれば
   どうにか
   寒い冬を乗り越え よかったねと
   ほっと 胸をなでおろす

        わたしの心にも
        やっとこ やっとこ
        春がきた 春がきた


タンポポの花


   驚いてしまったわ
   アナタがもう
   咲いていたなんて

       周りは
       枯れ草ばかりの道端に
       へばりつくように
       どうどうと 力強く

   綿毛も
   いつだって飛ばせる
   準備をしているね

       少女の頃
       友だちがいなくて
       ひとりぼっちでいたとき

   空き地で
   アナタをみつけて
   じんわりと 心が
   あったかくなったよ

       アナタの花色 アナタの姿
       わたし だいすき
       いまでも変わらないよ
       その気もち

   アナタをみていると うれしくなる
   いくじなしのわたしが
   がんばれるような気がする


母の仕事


   冷たい風受けながら
   水仙 カンツバキが
   健気(けなげ)に 咲いている

        ユリカモメが群れ飛ぶ
        水辺の散歩みち

   行き交うひとに 会釈しながら

   ときどき 立ち止まって

   携帯を触るたび

        待ち受け画面で
        ワハハ ワハハと
        あなたが笑っている
        大きな口を開けて

   いちにちに なんかい
   その笑顔を
   眺めることだろう

        あなたの健康のこと
        あなたを支えている方々のこと
        あなたと一緒に居る友だちのこと

   眺めては 祈り
   祈っては 眺める

        おもいのたけは
        神の御座(みざ)へと
        導かれていく

   母の仕事は
        祈ることだと
        心得ている


新しい年に向かって

   みずいろの空
   ぽっかり浮かぶ白い雲
   どっかりそびえる山々

       木々たちは葉っぱを落としても
       春への思いを秘めて
       息をひそめている

   凍(い)てつく寒さのなかを
   シラサギが飛んでいく
   大きな羽根をひろげて
   ゆうゆうと

       うしろをふりむかず
       まっすぐ歩いていこう

   時が良くても悪くても
   語り続けていこう

       主が
       わたしにしてくださった
       愛のみわざを

   もう新しいことが
   起こりはじめている

       勇気とともに
       だんだん
       心が燃えてくる


ダイヤモンドはないけれど

   久々に 我が家に帰った途端
   ぐるり 部屋を見まわして
   まんなかに チョコンと 鎮座したあなた

        それから しゃくとり虫のように
        部屋中を這いずり回り
        畳の感触を確かめては
        キャツ キャツと 笑い声をあげている

   赤ん坊が 乳を飲みほし
   満腹になったあと
   あどけなく笑う その顔に似て

        「何がそんなに うれしいのだろうねぇ」
        軽口をたたいては 瞳を覗きこみ
        なんかいも なんかいも
        あなたの頬を 撫でている

   あなたの喜ぶ笑顔
   唯一無二の宝もの

        わたしには ルビー サファイア
        ダイヤモンドはないけれど


家族って いいなぁ

   あなたの施設の秋まつり
   人込みをかきわけ
   ぬうっと 現れたのは
   あなたの弟
      「ぼくのこと おぼえているかな?」

   (おう ひさしぶりだな)
      そんな表情で ケラケラ笑って
      応(こた)える あなた

   「パパにそっくりだー」
   「眉 目 鼻 そっくりだー」
      弟の子どもたちが 飛んできて
      ふたりをみくらべては
      さかんにはやしたてる

   「ほんとに そっくりね」と
   嫁さんも頷き 笑い
   父さんも母さんも 大笑い

      笑いの渦は あなたの周りで
      大きくなったり 小さくなったり
      またまた 大きくなったり

   ニコニコ顔のあなたと
   それぞれに 握手する

      家族って いいなぁ
      やっぱり いいなぁ


恋花 いちりん 咲いたかな

   キミを 迎えにいったとき
   キミは 私を通りぬけ
   ひとりの女性(ひと)に近づいて
   じぶんの頬っぺたをつきだした

        その女性(ひと)は
        キミの頬っぺたに チューをした
        声あげ 喜ぶキミがいた

   「いってらっしゃい」
        まじめな顔で
        軽く 手を振る彼女

   いままで 見たこともない光景に
   あぜんとして とまどう私

   「おふたりは仲がいいのですよ」
       そういって 笑っている支援員さん

   しゃべれないキミに
   重いハンディキャップを抱える キミに
   43歳の 遅い青春

   ちいさな かわいい 恋の花
   散らずに 咲いていておくれ

        恋花 いちりん 咲いたかな
        ほんわか いちりん 咲いたかな


優しい時間


   あかあかと空を染めて
   日が沈みかけている
   ちらほら 街灯がつきはじめ
   行き交う 車のヘッドライトが光る
        酷暑で避けていた ウォーキング
        ひさびさに 再開してみる

   驚いた 草むらでは
   しきりにコオロギが鳴いている
   季節の移ろいのなんと早いことだろう
   もう 秋がはじまっていたなんて
        そう思ってみれば
        セミの声も あまり聞かれない
        ちょっぴり冷気を含んだ風も心地よい

   飛行機の爆音がひびき
   電車が近づく音がする
   昨日の嵐がうそのような
   いつもの夕暮れ

         きょうもいちにち守られ
              あなたのいちにちは どんなだったか
              風邪はひいていないか
              ひもじい思いをしてないか

   感謝と せつなさと あしたへの願い
   すべてを まぜあわせて
   おもいの糸は 祈りを紡いでいく

           この地上にも 私にも
           ゆっくり ゆっくり
           優しい時間が流れている


肝っ玉かあさん

   地上の生涯が全てであるなら
   わが子が 生きていく意味があるのだろうか
   なんども悩み こころ折れる日々

           地上の生涯が終わりではなく
           そのさきに
           神を信じる者が入る麗しい国
           永遠(とこしえ)の国があると知った
           そのときから
           ちいさいけれど 希望がうまれた

   世間体など気にしない
   この世の基準など考えまい
           ひとは 生かされているかぎり
           いかなるひとであっても
           尊い使命と役割があるのだからと
           そんなふうに
           わが子を思えるようになった
                希望って だいじだなあー
                希望があれば ひとは生きていける

   泣き虫 悲劇のヒロインを自認
   マイナス志向だった わたしが
   気づいたら
           「肝っ玉かあさん」 なんて
           よばれたりして ビックリ
           人生とは わからないものだ

   「肝っ玉かあさん」
   なんて力強いことばのひびき

           ねがわくば ほんものの
           「肝っ玉かあさん」になりたいものだ


ハッピーエンド


   5年ぶりに予約した 歯科受診
   障害者専門歯科は 車で片道
   1時間もかかってしまう場所

        遠くて 久々の受診
        きっと
        あなたは イヤに違いない
        はたして どうなってしまうのやら

   当日の天気予報 大雨に注意
   小雨ちらつく 空見上げ
   心は ちぢに乱れる

        (主よ お守りください 全てをお委ねします)
               祈りに祈って 出かけた

   なんとか 病院に着くと
        がらんとしている 待合室
        キャンセル続出で すぐ呼ばれた

   医者と看護師 総勢4人に
   優しく 取り囲まれて
   かわるがわるに かしずかれ
   ほめられつつ 励まされつつ
                受診と治療 めでたく 無事終了
                終始 にこにこのあなただった

   「とってもいい笑顔 写真を撮らせてね」 と 看護師さん
   あなたが こんなにモテたこと 珍しいね

        雨も たいして降ることはなく
        不安に 押しつぶされそうだった日は

                ハッピーエンド


ただクンのこと


   ただクンのおかあさんに スーパーであった
   ただクンが亡くなって5年 ひさびさに
   おかあさんと 手をとりあって泣いた

        ただクンとたっクン
        いつも いっしょにいたね

   散歩のときは 手をつなぎ
   みんなより う〜んと 遅れて
   のろのろ やっとこ 歩いていたふたり

        食事をするときも 差し向かい
        なんにもいわない いえない
        似た者どうしのふたり
        それでも 心は通じあっていた

   ただクンが逝(い)なくなって しばらく
   どうして ただクンが そばにいないのか
   のみこめない たっクンは動揺していた

        「大きな 赤ちゃんだった息子
        あの子は 天使のような子だったよ
        わたしね ひとりぼっちになってしまったの」

   そういって また泣いた
   ただクンのおかあさん

        スーパーを出て 私もまた泣けた

   やりきれない思いで 見上げる空に
   雲が ゆっくりと流れて
   そよ風が やさしく ほほをなでていく


桜並木はあなたへと続く道


   延々続く桜並木を 通り抜けると
   あなたが住む 施設(いえ)がある
   あなたに逢うため 通いなれた道

        桜が芽吹き 蕾が大きく膨らむと
        もうすぐ満開になると 心楽しくなり

        満開の桜のトンネルができると
        メルヘンの世界に 迷い込んだ少女のように
        きれいだきれいだと 声高にはしゃぎ

        葉桜になってしまうと
        あっけなく散ってしまったと 寂しさ募り

        葉っぱが 全部落ちた頃は
        厳しい冬がやってくると 気持ち引き締める

   何年も何年も 繰り返され 見て来た光景
   だけど いつしか わたしも
   高齢者とよばれるようになってしまった

        来年の桜 見ることは叶うだろうか
        ちゃんと あなたに逢いに行けるのか
        切ない思いは 浮き沈みする

        「あなたがたのうちだれが、心配したからといって、
        自分のいのちを少しでも延ばすことができますか」

   みことばを噛みしめながら
   桜並木を今日もゆく
   ただひたすら あなたの笑顔を見るために

        桜並木はあなたへと続く道


早春の風の中で


   近くで青黒く光るのは 多度山
   遠くでまだ雪を頂くは 御嶽山

        平原を渡っていく風が
        きょうは暖かい

   草や木が萌えだして
   若い緑がきれいだな

        神に創られた
        すべてのものが
        うたっている

   もうすぐ春ですよー
   春が来ましたよー

        喜びのうた声が
        風に舞っている

   同じ時を支えあう
   自然界のハーモニー

        なんだか新しい事が
        始まりそうで
        ワクワクしちゃう

   振り返って
   あなたを見れば
   目をつぶり
   風に吹かれて立っている

        笑みを含んだ 口もとをして


キミの笑顔


   キミは 人気者だそうな
   にっこり笑う仕草が
   かわいいのだという

        「なんともいえず 癒されるのです」
        キミを 世話する人が
        耳元でささやいた

   そういえば
   子どもの施設を出る時も
   「彼 どこに行っても愛されますよ
   笑顔がありますから」

           そういって
           たくさんの方々が
           握手してくれたね

   そのことがうれしくて
   照れた笑顔で みんなの周りを
   ぐるぐる 廻っていた キミ

           笑顔がいちばん
           笑顔があれば
           なんとかやっていける

   キミは 人の輪を生む力
   平和のカギを握っている

           神は
           最高の賜物を
           キミに下さった


バトンタッチ(母が遺したことば)


   この子は 人として不利な条件を
   たくさん 持っているかもしれないね
   でも
   ふしあわせな子だと
   決めつけてはいけないよ

        障害を持っていること
        イコール
        ふしあわせではないのです

   子育てで 肝心なのは
   夫婦が 仲良くすること
   互いに 協力しあうこと

        パパとママの輪の中で
        この子は この子なりの心で
        自分が 愛されていることを知るでしょう

   愛を知る子は しあわせなのです

        母が遺した 子育ての極意
        いまは わたしが 娘に伝えている

   三代繋がる 「ことばのバトン」
   あつき思いを込めて バトンタッチ




   降り続いた雨が
   やっとあがって
   山並みがくっきり
   まじかに見える

        思い悩む心を
        もてあましながら歩く
        田んぼみち
        ふと
        見上げた空に
        大きな虹が架かっていた

   壮大な宇宙(そら)のアート
   神さまのみわざのプレゼント

        思わず知らず
        七色のきらめきを
        人差し指でなぞってみる

   ちっぽけなことで
   クヨクヨするのは止めた
   人生でどうしても必要なものは
   わずかだから
   いや
   一つだから

        心の中で何かが
        プチンとはじけた
        よどんでいたものが
        どんどん清められていく

   ふつふつと喜びが湧いてくる
   かすかな希望が見えてきた


みちづれ


   いっぽも 歩けないと思った道
   のんびり 小さな歩幅だったけれど

          振りかえみれば
          ずいぶん 歩いてきたね

   ぼくだって 友だちつくれたよ
   ぼくだって いろんなことを学んだよ

          ちかごろ
          きみの 心の声が
          ずんずん 迫ってくる

   きみとの みちづれ
   そう 悪くはないよ
   むしろ
   なかなか いいものだ

          楽しみながら 歩いていこう
          ゆっくりと この道を

   きみと いっしょに 歩いた人生(みち)に
   たくさんの 愛の花を 咲かそうよ


自分の命を生きている

   ひとことも
   ウソをつかない
        ひとことも
        グチをこぼさない
   ひとことも
   ヒトを非難しない

        人が犯す舌の罪も
        果てしない欲望も
        強情な自己中心も

   あなたにはない
   これっぽっちもない

        与えられた環境の中で
        ただひたむきに
        自分の命を生きている

   あなたの姿 在り様が
   時にはむなしく 時には激しく
   私の心をえぐる

        真理(みち)をはずれ
        さまよう私を いつも
        神の前に引き戻す

   あなたに恥じないような
   母でありたい


寝顔


   夜の静寂(しじま)の中に
   安らかな寝息が
   リズミカルに漂い

       あなたの意識は
       誰も立ち入る事ができない
       神秘の世界に入ってしまった

   小部屋に射し込む
   月明かりに照らされて

       あなたが微かに笑っている
       幸せそうに笑っている

   一日の疲れ
   煩わしいできごと
   心の曇り

       今日の嫌な垢(あか)を
       さっぱり洗い流して

   あなたの寝顔は絶品だ

       あなたの寝顔を眺めていると
       明日への勇気と希望が充ちてくる

   きょういちにちをありがとう



イエスさまが ほほ笑んでいる


   かあさんが 悲しい顔をすると
   あなたも 悲しそうな顔

   かあさんが イライラすると
   あなたも イライラ落ち着かない

   かあさんが 笑顔になると
   あなたも とびきりの笑顔

           かあさんと武雄は あわせ鏡

   そして
   あなたの 傍(かたわ)らには イエスさま

   いつも 黙って
   イエスさまが ほほ笑んでいる


きみが居て


   きみが 待っていると思うと
   病気など しておれぬ
   風邪も すぐに 治してしまう

        きみが 待っていると思うと
        父さんと ケンカしていても
        平和条約成立で 仲直り

   きみが 待っていると思うと
   あなたの 好きな食べ物 飲み物
   たくさんたくさん 用意して

        きみが 待っていると思うと
        ドキドキ 胸が高鳴って
        最高の笑顔で 会いに行く

   きみが 居て
   わたしの 人生は 廻っている

        きみって きみって すごいね


もうすぐあなたの誕生日


        ミーン ミン ミン ミン
        ミンミンゼミが 大声で 生命を鼓舞する
     暑い 暑い 真夏日

     片田舎の 小さな病院で
     あなたは 生まれた

        3日間の 生みの苦しみは
        かあさんとあなたの
        いのちがけの 共同作業だったね

     ポツチャリした かわいい男の子
     あなたを 腕(かいな)に抱いた時
     たまらなく いとおしく思ったよ

        あれから42年 もうすぐ
        あなたの誕生日が 巡って来る

     いくたびか 死線を越えて
     なお 生かされて在る いのち

        髭面(ひげづら) ぼちぼち白髪(しらが)頭
        すっかり おじさんになってしまったけれど
        あなたの 無垢な瞳と心は 幼子のまま

     あなたの 母親でなかったら
     もう少し ましな人生が あったかもと
     何度 枕を 濡らしたことだろう

        今 あなたに 感謝を届けたい
        かあさんの子供に 生まれてくれて ありがとう
        ほんとに ほんとに ありがとう




   施設の門が見えてくると
   へらへら笑っていた あなたの顔が
   一瞬に曇る
   炎に溶かされていく ビニールのように
   いびつになっていく

         話せない あなたが
         涙が こぼれそうな顔で
         精一杯 心を表現している

   「帰りたくないね
   かあさんたちと一緒に住みたいね」
         いつものことばを 投げかけながら
         どうしようもない やるせなさが漂う

   駐車場に ブレーキ音が響く

          「また会いに来るからね
          また迎えに来るからね」
          悲しみを 振り切るように

   必死で呼びかける

          車のドアが 静かに開かれると
          あなたは 己の人生を 悟った顔をして
          おもむろに降り
          建物の中に 消えていく

   いつまでたっても 慣れることはない
   日々 あなたの顔を 思い出すたび
   突き刺さる 悲しみが疼(うず)く
   自分の無力さが 身に沁みる

          神にすべてを委ねて 祈ることを知った


今は恵みの時、今は救いの日です


   神なんていない うそだ
   しゃべれない あの子が
   どうして ひどい病気になったのか

        誰もいない 駅のホーム
        天を仰ぎ 号泣した

   今は恵みの時 、今は救いの日です

        どこからともなく 迫ってくることば
        波のように 押し寄せてくる
        不可思議なことば

   いったい 何のことだろう
   わけがわからぬ 自問自答の中で
   いつのまにか 心は凪(な)いでいた

        神さま お願いです あの子を 助けてください
        神さま お願いです あの子を 癒してください

   一心に 一心に 初めて
   祈る 行為をしていた

        つたない祈りを 神は聴き入れられた
        ほどなくして バプテスマを受けた わたし

   ずいぶん 経ってから 聖書の中に
   あの時の ことばをみつけた

   今は恵みの時、今は救いの日です

   一瞬にして解った みことばの真実 神の力
   神は 生きておられる
   いつでも 語っておられる


野の花のように


   ふと気付いてみると
   君は もう おとな
   とっくに背丈は
   とおさんとかあさんを 追い越している

        思えば 白いワイシャツに
        ネクタイを キリリと 締めて
        背広姿だって ステキかも しれないね

   それなのに
   母さんの 瞳に写るのは
   いつだって トレーナー姿

        青空のもと 風と戯れながら
        いちめんの 菜の花畑を
        おもいっきり 両手を広げ
        歓声上げて 走りまわる 君

   受験戦争も グルメも
   流行の ファッションも
   リッチな 世界旅行も
   全く 無縁の世界で

        生まれたばかりの
        赤ん坊のような いのちが
        そこで きらきら 輝いている

   人間の 欲望なんて
   あさましく むなしい

        神さまの 御手の中で 生かされて
        君のいのちが 輝いていること
        そのことがいちばん 嬉しいことだから

   野の花のように
   野の花のように
   あるがままに 生きていきたい


さんぽみち


   まっかに染まった あかね空
   そぞろ歩きの さんぽみち

           すず風が 優しく頬を 撫でていく
           あなたは 眼を細め 笑って歩く

   葉っぱ 引っ張って バリ バリ
   石ころ 投げて コロ コロ
   木切れ 拾って ユラ ユラ

           神が創られた 麗しい世界で
           無心に遊ぶ あなたの瞳の 安らかさ

   ふと われにかえって
   ほほえみかける あなたよ

           暮れなずむ 夕暮れは 心休まるね
           あしたも 晴れだ

   さあー走って お家に 帰りましょう
   かけっこ ヨ〜イ、ドン


仲間


   つらい育児で 身も心も すりへっていた頃
   同じような 障害のある子を持つ
   二人の仲間ができた

         驚きと興奮が 私を包んだ

   私たちは トリオで 徒党を組み
   それぞれの子を連れて
   レストラン スーパー 公園
   どこへでも出かけた

         悩み 苦労 不安 恐れ
         涙を流して 互いに分かちあった

   でも 最後には
   全てが 笑い話に変化していた
   涙をぬぐって 腹をかかえ 笑いあった

         帰りには きまって
         生きる力と 勇気が満ちていた

   三人で共有した 時間の重さ すばらしさ
   仲間がいたから 生きてこられた

         試練とともに 脱出の道も備えてくださった
         神の愛の 確かさを思う


モットー


   わが子の障害を 受け止めきれずに
   相談所の トビラを叩いたとき
   臨床心理士が 笑顔で言った

 おかあさん
      元気 根気 のん気 に
      希望のエッセンスを
      一滴 二滴 振りかけて
      それをモットーとして
      生きていきましょう

   ムリ ムリ ムリ
   心配性で小心者 根気などまるでない
   希望持てないから ここにきたの
   心の中で否定して 強くつぶやいた

   それでも それから
   わたしのクチグセは
      元気 根気 のん気
      希望のエッセンス
      と なった

   言い続けていると
   それらのことばは ほんとうに
   わたしの 子育てのモットーとなった


いちねんじゅう クリスマス


   あなたが好きなこと
   クリスマスソングを 聴くこと
   春夏秋冬 いちねんじゅう 聴いている

        赤鼻のトナカイ は

        のりのりで アーアーと歌っている
        ジングルベル は
         体をゆらして 楽しげだ
        きよしこの夜 は
         感きわまって 涙こぼれそう
        ハレルヤコーラス は
         神妙な顔つきで 固まっている

   あなたは 何時でも どこでも
   クリスマスソングを 聴くのが とっても大好き
   父さんが作った オリジナルテープは
   今にも 擦り切れてしまいそう 

        考えてみると
        クリスチャンは いちねんじゅう
        クリスマスを 賛美しないとね
        救い主の誕生を 日々喜び
        感謝を 続けないといけないね

   わたしも あなたと 
   いっしょに 歌おう
   罪にまみれた わたしの人生を 
   新生させてくださった 神の御子に 
   思いをよせて 声高らかに


神のわざが現れるためです


因縁 因果 前世の罪
   かわいそうな親子だね

            人々が眉ひそめ ウワサしているようで
            いつもオドオド 下を向き生きていた

   この子さえいなければ
   どす黒い地底から 湧きあがる 悪魔のささやき
   息をすることさえ 辛く苦しかった

            そんな時
            イエスさまに出会った

   この人が罪を犯したのでもなく
   両親でもありません
   神のわざがこの人に現れるためです

            みことばにふれた途端
            ひとすじの光が 鋭い矢となって
            私の全身をつらぬいた
            とめどもなく流れおちる涙 涙 涙
            呪縛のクサリからの 解放

   自由な心から 希望が生まれ
   感謝が生まれ 平安が生まれた

            生きることが 楽しくなった
            我が子が 愛おしくなった
            神のわざが この身に現れたのです



 ぼくのおにいちゃんの詩は、次男の作(当時8才)です。この詩は、プロの音楽家がメロデイーをつけ、コンサートで発表してくださいました。

ぼくのおにいちゃん

   しゃべれないおにいちゃん
   いつもひとりぼっちであそんでいる
   そんなおにいちゃんさびしそう
   友だちできたらいいのになあ

        はやくしゃべれるようになってね
        ぼくはいつでもそう思っている

   おにいちゃんは心の中で
   どんなことを思うのだろう
   何がしゃべりたいのだろう
   それがわかったらいいのになあ
   おにいちゃんの心の中を
   そっとのぞいて見たい

         おにいちゃんができないこと
         ぼくにできることがあったら
         なんでもやってあげたい

   体のデッカイおにいちゃん
   いたずらばっかりおにいちゃん
   世界じゅうでたったひとりの
   ぼくのおにいちゃん
   やっぱりぼくはだいすきだ


武雄へ


   ことばを話せない
         もどかしさを目に秘め
   何度も何度も頭を下げ
         手を合わせこいねがう武雄よ

   わかっているよ
         君の心の中でことばが
   おしくらまんじゅうをしてるから
         ひとことおしゃべりほしいから
   かあさんは知らないふりをしているだけ

   タケオタケオ良い名前
         おじいちゃんがつけてくれた名前
   君は自然児のように
         無欲に今日も生きている

   かあさん死んでしまったら
         君の心の叫びを
   誰が聞いてくれるだろう

   そんなことを
         考える日もあるけれど
   今日いちにちの幸せを感謝して
         明日への恵みを祈ろうね


いたずら天使

物事の判断をできない、長男との生活(現在は施設に入所)は、家族にとって、全てにおいて壮絶な闘いの日々でした。

いたずら天使

夕餉の仕度 している傍で
ウロウロ いたずら物色ちゅうの君

その時 突然 電話のベル
受話器を置いて もどってみると

君がつくった
不思議な料理 できている

    手を振り上げて みたものの
    笑顔を見ると 叱れない

弟の教科書 破っても
妹の人形 壊しても

父さんのカセット めちゃくちゃしても
つぶらな瞳が すましている

    大声で 怒鳴ってみたが
    やはり君を 憎めない

いたずらは
君の生きる力 と 証しだね

君を愛すということは
君のありのままを受け入れること

君はわが家の いたずら天使


ねえかあさん
 次男(現在30代)が小学校に上がる頃、私に語りかけて言ったことばを集めて、詩にしました。
「たっくん」という呼び名は、我が家での長男、武雄君の愛称。

ねえかあさん

たっくん どうしてお話できないの
どうしてもなおらない頭の病気なの
えらいお医者さまでもだめかな

   ねえかあさん
     たっくんのユメみたよ
     にこにこ笑ってしゃべっていたよ
     ぼくうれしくて
     わんわん泣いたら ユメさめた

ねえかあさん
神さまが人間をつくったの
神さまだったら
たっくんの頭 なおしてくれるかな

ねえかあさん
ぼくお祈りするよ
神さまにお祈りするよ

たっくんに ことばをあげてくださいって


あなたへのメッセージ


 長男に重い障害があると判明した時、私には絶望だけがありました。
「苦労は、僕も共に背負っていくよ」と、言ってくれた夫のひとことが、私に生きる勇気を与えてくれました。神が、引き合わせてくださった生涯のパートナーを感謝しています。

   この子には 僕の血と君の血が半分ずつ流れているんだ
   どこか僕の仕草に似ていて どこか君の表情に似ている
   こんな可愛い子 世界中捜したっていないさ
   苦労は仲良く分けて 背負っていこうな
   長い夜 手を取り合って泣けるだけ泣いた
   あれから何年経ったのだろう
   めまぐるしく過ぎていく日々の中で
   静かなひとときを憩う あなたとわたし
   この子がいて良かった
   心から そう思える日のために
   どこまでも 支えあっていきましょう
   あなた


武雄とともに

   暮色に包まれた 誰もいない公園で
   ブランコに乗る武雄
   大きな身体をゆすりながら
   無邪気な笑顔が舞いあがる

   あなたと生きた幾年月
   いろんな日々があったけど
   生きていてよかったね

   生きるってことは傷つくこと
   生きるってことは勇気を持つこと
   生きるってことは感動すること
   生きるってことは誰かを愛すること

   みどり児の澄んだ瞳そのままで
   母さんに教えてくれた
   あなたを力いっぱい愛したい
   母さんの命を燃やして愛したい

   生きることの尊さを
   生きることの確かさを
   かみしめながら少しずつ
   あなたとともに歩いていこうね

   オレンジ色の雲をみつめて
   微笑みかわすふたりです