瞳とじれば母の声

   瞳とじれば母の声
   背に負われて聞いた子守唄
   なつかしさがよみがえる

       瞳とじれば母の声
       苦労は必ず実るよと
       いさめてはらはら目に涙

   瞳とじれば母の声
   迷いながら泣きなさい
   貴女の幸せ願っている

       瞳とじれば母の声
       たとえちいさな希望でも
       持ち続けて生きなさい

   瞳とじれば母の声
   人生を旅するあなた
   勇気とともに踏み出そう

       瞳とじれば母の声
       歳月は消え去るけれど
       母の声は日々新た


S子さんへ


   ほんとうに会えたね
   思いっきり口をあけ
   お腹を押さえて笑ったね

   おいしい食事をとりながら
   ちょっぴり しんみり
   お互いの人生を語りあって
   うんうんと頷きあった
   ふたり

   あのとき わたしは
   胸の奥がぽっーと
   熱くなっていたよ

   初めて乗る人力車
   はしゃぎながら
   ひんやりとした竹林を通ったね

   トロッコ列車から
   仲良く 保津峡を眺めて
   絆を確かめあった 京都の旅

   ふたたび 遠く
   離れ離れになってしまった
   友よ

   わたしは忘れない
   神さまの恵みに満たされた
   あの旅を そのよろこびを

   元気でいたら いつかまた
   あいましょう





忘れないで (友の洗礼を祝して)

   忘れないで
       私は孤独(ひとり)だなんて悲しみに涙するとき
       いつかは思いだしてほしい
       主があなたを愛しておられることを
       あなたを大好きな人々がたくさんいることを
   忘れないで
       あなたのためにたくさんの祈りが積まれたことを
       今も祈りの輪の中にあなたは存在(い)る
       あなたはひとりではない
   忘れないで
   忘れないで
       イエスさまの十字架を見上げることを
       わたしたちの罪のみがわりとなられたこの方を
       イエスさまの愛に囲まれた幸せを
   わたしたちは
   現在(いま)も 未来も 神の家族です 


神のなさることは

   生きたいと願っても
   死が訪れることがあり
        死にたいと思っても
        生かされ続けることもある

   いやだと拒否しても
   やるはめになることもあり
        泣くことがあっても
        喜びに変えられることもある

   大切なことを伝えても
   伝わらないことがあり
        おし黙っていても
        ちゃんと伝わることもある

   さまざまな時はあろうとも
   人智を遥かに超えて
   神は働かれ ご愛をしめされる

        神のなさることは
        すべて
        時にかなって美しい


シンプルに生きよう

   何年も 書き綴った
   ぶあつい わたしの日記
   びりびり破って捨てた

         わが家の歴史を刻む
         大量の写真 アルバム
         残したいものだけを残し
         破って捨てた

   タンスのこやしになっていた
   いつかは着ようと 思っていた服
   着ないが 思い出のある服
   これらも捨てて 整理した

         ほとんど使わない物
         眺めているだけの物
         思い切って 捨てた

   ついでに
   嫌な思い出も 捨ててしまおう
   そう 決意した

         捨ててしまえば
         スッキリ
         思いだすこともない

   やがて
   大切なモノ 必要なモノ
   はっきり それが見えてきた
   わたしにとって
   それは 多くはない

         シンプルに 生きよう


パスポート

   若いころは
   死んでしまおうなんて 悩んだりしたが
   生かされ続けて なんとか
   きょうまで生きて来た

       挫折 空虚 悲哀 苦難
              人生に 試練はつきものだけれど

   振り返って 記憶をたどれば
   どんなときにも 助け手があり
   そこから 脱出の導きがあった

          それは 神の御手だったと
          確信している

   神の憐れみと恵み 神の愛
   神の民とされた者の幸い

          私は いま
          神の御国(みくに)に入れる
          特権をあたえられている
          これ以上の喜びを 私は知らない

   永遠の国へのパスポートなのだから


にじいろのシッポ(教会学校キャンプ場にて)

   息をはずませ 男の子がかけてくる

   「ばあちゃん みてー トカゲのこどもだよ
   シッポがにじいろ ぼくがみつけたよ」
        まんまるい目が得意気で 満面の笑み

   「わぁほんとにきれい にじいろだね」
        肩をすくめて 私が叫ぶ

   「ぼくにも にぎらせて」
   「わたしにも にぎらせて」
        何人かの子どもたちが 集まって来る

   「ヤダーヤダー」
   「まってーまってー」
        森にかこまれた広場で
        グルグルグルグル
        鬼ごっこがはじまる

   「トカゲさん 生きているのよ
   放してあげないとだめだよ」

        「わかった もう放すから」

   好奇心のかたまり 生き生きした表情
   そんな子どもたちの姿を見るのは
   実に楽しく 嬉しいものだ

        本来の子どもは こうでなくてはね


大切な友を思って

   庭に下りて 草ひきをする
   花の小さなつぼみをみつけては
   いとおしさに ほほえんだりして

         しらずしらずに 動きがとまる

   あなたが どうして どうして
   おおきな病にかかってしまったのか?
         シクシクシクシク こころが痛む

   私が 弱りはてていた時
   あなたはずっと 私のために
   祈っていてくれた

         こんどは 私が
         あなたのために 祈ることができることを
         むしろ 喜びとしましょう

   いのちの主権者なる主よ
         愛する友に 声かけたまえ

   わたしはあなたとともにいる 恐れることはない
   わたしはあなたに 最善のみちを用意していると
   わたしはわたしに 信頼する者に栄光を顕わすと

           涙を 笑顔に変えてくださる
           私たちの神 主よ

   私のこころは 叫びます
         いつの日かまた 友とふたりで
         このことも 喜びあって
   あふれる感謝で満たされる時がくることを


恵み (詩人恵子さんの生涯)

   モノが 詰まってきたので
   必要なモノ 不必要なモノ
   取捨選択しようと 思いたった

        押入れや引き出しを 引っくり返す
        生きてきた分だけの 歴史のモノを
        思いきるのは 大変な作業
        いつのまにか 漫然として手が鈍る

   引き出しの奥の奥
   詩人恵子さんの詩集が 何冊か出てきた

        東京生まれ 東京育ち 知性豊かで
        ことばがきれい 心がきれい
        何よりも 魂が澄んでいる人だった

   ふとしたことがきっかけで
   恵子姉さん キミちゃん と
   親しく 呼びあう仲となった

        彼女の生命が危ないと聞き かけつけた重い病の床で

   「わたしの人生は 神さまからの恵みの連続だった
   最後の詩集のタイトルは 『恵み』にしようと思っているのよ」
                   穏やかに ほほ笑んだ恵子さん
   真っ白な雪が舞う日 眠るように天国へ

           あれから 18年
           最後の詩集 ふたたびめくりながら
                   彼女の魂の叫びを 静かにきいている
                   心に沁み入る思い 溢れる涙

   恵子姉さん
   私の人生も 神さまからの恵みの連続です


星の王子さま

   うれしいな 親友からの
   サプライズ プレゼント

        ステンドグラスに かたどられた
        手作りアート作品
        星の王子さま

   思えばなつかし 乙女の頃
   わたしのニックネームは
   星の王子さまだった

        半世紀の時を越え
        彼と再会できるとは
        なんという 恵み

   さっそく 天窓にそって
   丁重に掲げられた

        おひさまが登ってから 沈むまで
        日の光を背に受けて 色鮮やかに
        キラキラ輝く 優美な姿
        感動で うっとり しあわせ気分

   私は まいにち問いかける
   「ようこそ 我が家へ 王子様」

        小首を少しかしげて 王子さまはいう

   「かんじんなことは
   目にみえないんだよ
   心でさがさないとね」

奈良公園にて

   ゴトゴト電車にゆられ 奈良公園まで行った
   両親が大好きだった場所

           黄緑のモミジ 紫のモクレン
        赤のツバキ 黄のヤマブキ
        桃のカイドウ 薄紅のヤマザクラ

   花たちが誇らしげに 爛漫に咲き競う
   様々な色をのせて 春の大地はパレット
   (春っていいなあ〜)

           のんびりゆったり 草を食む鹿
        小鳥が のどかにさえずり
        修学旅行生の おどけて楽しげな姿
           外国人の カメラのシャッター音
        (平和っていいなあ〜)

   ときおり 桜舞い散る中を
   興福寺 東大寺 若草山 春日大社 二月堂
   指さしながら 歩いて 歩いて
   足が痛くなるまで 歩きまわった

           いにしえの都 古来の人々に思いを馳せながら
           猿沢の池のほとりで 足をさすり佇んだ

   不意に
   「奈良は素朴なところがいいだろう」
   「若草山からの眺めがステキでしょ」

           父母の声を聞いたような気がして
           目をあげ 辺りを見まわす

   春霞の彼方で ほほえむふたり
   あいたくて 涙がぽろり


お与えください 主よ

   いちにちは あっというま
   ひとつきも あっというま
   歳月は 消え去っていく
   あっというまに

        子供から若者へ 若者から老人へ
        人の歴史は 昔も今も変わらず
        ただ 時代だけが 築かれていく

   主のみ前で
   一日は千年のようであり
   千年は一日のようです

        地上の生涯を終え
        主のみ前に立つ
        その時

   私は どんな
   申し開きをするのだろうか

        お与えください 主よ
        清い生き方を 選べる知恵を
        謙遜な心と 強い信仰を

   お与えください 主よ
   どんな時にも 臆することなく
   あなたの愛を 証しする力を

        雪 しんしんと 降り続く夜
        心鎮めて 静かに祈る

いのちの灯(ひ)

   ロウソクが
   やせ細っていくように
   いのちの灯が 点っていた

        「遠いところを来てくれてありがとう」
        目を見開いて 語ったかと思うと
        すぐに ウトウト寝てしまう

   また起きて
   何度も感謝を繰り返す義母(はは)
   亡くなった父の 帰宅が遅いと
   心配顔したり
   「みんな 元気でありがたいね」と
   ほほ笑んだりして

        激動の日々を 夫に仕え
          たくさんの子を育てあげ
          しっかり 家庭を護った
          日本の母 98年の生涯

   いのちの あかりが 小さくなっても
   精いっぱい 燃え続け
   周りを 明るく 照らしている

        あなたの姿を見ていると
        (老いるも良からん)と
        帰り道を行く
        あなたのいのちを
        主に委ね 祈りつ

再び逢えて

   改札口を出ると 手を振るだけで
   わかりあえる あなたがいた

        元気でよかった
        再び逢えてよかった
        屈託ない笑顔で喜びあう
        あなたとわたし

   「ところで これから
   どっちに向いて行こうかな」

        手を取りあって
        迷うも楽しい 名コンビ

   セッチャンとイソチャン
   相も変わらず 珍道中

        頷きあい 笑いあい
        おしゃべりの キャッチボールは
        どこまでも

   ありのままの あなたが好き
   この広い空の下で
   あなたが生きている
   そう思うだけで がんばれる

        限りある 時を抱きしめて
        生かされて在る いのちに感謝して
        一泊二日の旅物語り


友よ

   悲しみに 沈むとき
   苦しみに あえぐとき
   悩みに 心乱れるとき

        友よ
        いつも あなたが
        そばにいてくれた

   十字架を仰ぎみて
   涙と 慰めと 祈りと
   声かけ 励ましあいながら

        勇気をだして
        なんども なんども
        立ちあがった わたしたち

   友よ
   かけがえのない
   わたしの友よ

        ハレルヤと うたいつつ
        ともに進み行こう これからも

   よろしく よろしくね


また会う日まで さようなら

   さようならも 告げないままで
   あなたは 消えてしまった
   竜巻が 連れ去ったかのように

      あなたの豊かな 長い黒髪も
      笑みを浮かべた しとやかな振る舞いも
      もう 見ることはできない

   伸びやかに 朗々と
   讃美歌をうたう 美しい声に
   誰もが振り向き 聴き惚れた

      あなたは 消えてしまった
      まだ うら若い子ども
      ただひとりを残して

   主よ なぜですか
      悲しみの涙は 尽きることがない

   輝く 神の御国(みくに)で
   きっと
   あなたは うたっているでしょう
   永遠(とわ)の国で また会いましょう
   私たちが信じる その国で

      合い言葉を確かめあって

   ひとりが涙を拭き ふたりが涙を拭き
   みなが涙を拭いて

      また会う日まで さようなら


老い先案内人

   血管の浮き出た 右手を高く上げ
   顔を クシャクシャにして
   車イスの母は 笑った-

       特別養護老人ホーム食堂

   居並ぶ 無表情の輪の中
   そこだけ ぽっと
   スポットライトが 当てられた

       九十八年の歳月を 背負ってはいるが
       少しだけ 凛と 背筋を伸ばした母

   今はもう 人生の重荷を振り棄てて
   全ての束縛から 解き放たれ

       過去と現在を いったり きたり
       夢の世界に 入ったり 出たり
       穏やかに 自由に 行き来する

   それでも しきりに
   私たち夫婦の名を呼ぶ

       孫の手紙を渡すと 読んで ひとこと
       「優しい子だね」
       涙が ひとすじ 流れ落ちた

   (わかってくれたのだ )
   私たちは めくばせをする

       大好きだよ おかあさん
       あなたは 素敵な 老い先案内人


モミエさんの花ことば

   ゆかしいのは ユリ
   華やかなのは ボタン
        おちゃめさんは スイートピー
        かわいい〜は チューリップ

   菊は 高貴な漂い
   こぶしは 純な心
        すみれは 遠い思い出
        野ばらは 耐える美しさ

   世に たくさんの花があるけれど
   わたしが 一番好きなのは
        ほらっ あそこに咲いている
        一群(ひとむらの) コスモスよ
        優しげで 一生懸命

   秋の小道(こみち)を 歩きながら
   乙女のように はにかみ
   おしゃべりしてくれた モミエさん

        秋めいてくると 思い出す
        モミエさんの花ことば

   恋しいあなたは もう逝ない

        今年も 捜してみよう
        どこか あなたに似た
        あなたの花を


埋もれてしまった話

   終戦記念日が近づいてくると
   母は にわかに 悲しげな顔をして

          「あの時は ねえー」

   大きな溜息を ひとつ
   私の手を 引っ張って 自分の前に座らせる

          また いつもの昔話を 聞かされるのかと
          それから 延々続く時間に
          半ば 諦め顔で 神妙にすわる私
          母は もはや 両目に いっぱいの涙

   引き揚げ船での 苦労話
   父が 銃殺されそうになった話
   赤ん坊だった 私のオムツは 全部母の着物だった話
   惨めな姿で 死んで逝った 多くの人々の話

          話は 泉のように 湧き出でて
          大粒の涙が とめどもなく流れ
          それを 拭おうともせず
          時々 しゃくりあげながら

   「こうして 生きているのが 不思議なのよ
   戦争は 決して決して やってはいけない」
   母は 握った私の手に 力を込める

          いつも話は  同じ筋(すじ)なのに
          いつしか 熱い涙が 頬を伝い
          一緒に 泣いている私

   母の 涙 涙の物語

          今は 封印されたまま ひっそりと
          心の奥に 埋もれてしまった


ごめんね

   ごめんね
   たった ひとことが
   なぜ 言えないのだろう

        意地とプライド ちっぽけだが
        やっかいな シロモノが
        心に 貼りついている

   私を縛るのは 私の心
   私は 間違っていないと
   叫び続ける かたくなな心

        あのひとではない

   自分は そんなに偉いのか
   本当に 正しいのか
   否である

        啖呵(たんか)を 切っているだけの
        哀れな人間だ

   ごめんね
   ちょっぴり ほんのちょっぴり
   勇気を出して 謝ろう

     その時
        貼りついていた モノが
        ポロリ 落ちて
     平安という 最高の宝が得られる


小さな同窓会

   もうすぐだ
   指折り数えていた 小さな同窓会

   あっというまに その時がきて 終ってしまった
   心地良い余韻と 何となくの虚脱感

         それぞれの 生活状況の中
         時間をさき ひとときを 共有しあって
         四十数年の 時を越え
         旧交を 温めあった四人

   今はもう 時効成立だから
   あのときは こうだった ああだったと
   笑いあい 頷きあって
   むかしの乙女たちの おしゃべりは尽きない
   青春の 甘くほろ苦い 思い出


         「健康がいちばんだよね」
         いつのまにか 話題は変化していく
         人生後半を 元気で生きぬくために
         体験談に 華が咲く
         真顔で 頬を寄せ合う 友の輪

   身体を 大事にしようね
   私の住む町にも ぜひ来てね

         また 計画しましょうよ
         約束よ 忘れないで みなさん


きょうという日

   花広場で 草花を 買い求めた

   マーガレット ペチユニア キンレンカ
   ビオラ サルビア ゼラニューム
   バーベナ マリーゴールド ミリオンベル

        我が家の庭に 所せましと植えた
        「わたしを 見てー見てー」
        と
        小さな花たちが 可憐に
        自己主張している

   いっぺんに にぎにぎしくなって
   しらずしらずに 笑みがこぼれてしまう

        花々と会話して
        きょうは それだけで
        いちにちが 終わった

   夜の帳(とばり)がおりて
   外は 柔らかな雨音

        特別なことは 何も起こらなかった
        平凡な いちにちが
        ありがたくて 素晴らしくて
        まぶた閉じ 頭を垂れる

   主よ
   きょうという日を
   恵みを 感謝します

桜と父さん

   実家近くの 桜並木は 見事に満開だった
   うららかな 春の日差しが 降り注ぎ
   そこは さながら 別天地だった

            「やっぱり 桜は いいなあー
           連れて来てくれて
           ありがとう ありがとう」

   不自由な足を 杖に預けて
   やっと立ち 嬉しげに
   声を張り上げた 父さん
   目に 涙が 溢れていた

           それから 3日後に
           突然 逝ってしまった

   親子で眺めた 桜の 並木道を
   父さんを乗せた 霊柩車が走る

           おりしも吹く 強風にあおられ
           桜吹雪となった その中を
           静かに 厳かに 葬列の車が進む

   人生の無常を 思い知った

           桜の季節が 巡って来るたび 思い出す
           頑固一徹だった 父さんの流した あの涙

   父さん
   桜は やっぱりいいねー


ふたり

   蒼い 蒼い 空の下
   純白の ウエディングドレス姿の あなた
   紺色の タキシード姿の 彼
   祝福の フラワーシャワー

          希望と信頼に 満ち溢れ
          まばゆいばかりの 輝きを放つ
          ふたり

   この 地球 (ほし)に 何億人がいるのでしょうか
   神が結びあわせた 不思議な 縁 (えにし)の ふたり

          誕生したばかりの 一対の夫婦
          オリジナルな 夫婦物語が
          いま 始まった
          世界で ただひとつの 愛のものがたり

   ふたりは ひとりよりもまさっている
   もし ひとりなら打ち負かされても
   ふたりなら 立ち向かえる
   三つ撚りの糸は 簡単には切れない


かあさん

   鏡を覗いて 「あっ」と
   声をあげそうになる

        太い眉 眉間のシワ 目つき 口もと
        すべてが 母に生き写し

   まぎれもなく そこに 母がいる
   36年も前に 亡くなった 母がいる

        若い時分は 母似が嫌で
        反抗してばかり
        母を気遣うことなど なかった

   じっと まぶたを閉じて たたずむ

        母の涙 切ない思いが 伝わってくる
        なつかしさが じんわり 沁みてくる

   あいたくて あいたくて 
   泣き 叫びたくなる

        かあさん かあさん かあーさーん


Gift (奇跡の中を生きている)

   人のいのちは とてつもない確率で
   競り勝って 生まれるのだと
   どこかで 聴いたことがある
      生まれなかったいのちの
      なんと多いことだろう

   私が 私でないときに
   知らないところで 私のいのちが育まれ
   知らないうちに 現世に生まれた
   私は 何もしていないのに

      それは 神からの贈りもの
      神の憐れみと恵みが 
      この身に注がれて いただいたいのち

   わたしの目には あなたは高価で尊い
   わたしはあなたを愛している
   今日も 神が優しく問いかける

   愛には 条件がないことを
   絶望から希望が 生れることを
   邪悪な思いが 清められることを

      聖書の真理が 教えてくれた
      かけがえのない 贈りものを頂いた

   私は 今 生かされている
   奇跡の中を 生きている

      神からの贈りものを 
      次の人に渡したい 許された時間の中で
      神のもとに帰る その日まで


教会のおじいちゃん

   ひとまわり ちいちゃくなって
   棺に 横たわっていた おじいちゃん
   安らかで 穏やかな 死に顔だった
      最後のお別れに来たよって
      呼びかけたら
      かすかに ほほ笑んでくれた気がした

   うっそうとした 空き地の草を
   芝刈り機で 黙々と 刈っていた姿
          バーベキュー 餅つき大会 運動会
          ちょっと 面倒くさい 大変な役目を
          いとわずに たんたんと こなしていた動作
   悲しい時 苦しい時 嬉しい時
   さりげなく 寄り添ってくれた ひと

          子供から 大人まで 誰もが
          あなたに 愛された 記憶を持っている
          心に あたたかな 思い出を秘めている

   何事でも 自分にしてもらいたいことは
   ほかの人にも そのようにしなさい
          イエスさまの みことばを 
          自分の生きざまで 示したおじいちゃん


   斎場を出て 見上げた 北国の空
   どこまでも 澄み渡った 青い空だった

          地上の生涯を 精一杯 生き切った
          あなたの 人生のように
          美しくて 麗しい 空だった


いのち

   祈りがあった
   ひとつのいのちが胎に宿ったと
   わかったその時から
   たくさんの祈りが積み重ねられてきた

         キンモクセイの甘くやさしい香りが
         庭いちめんに漂う秋の日
         そのいのちが生まれた

   生れようともがくいのち
   産みの痛み苦しみと闘うママ
   立ちあい励まし続けたパパ
   あたりまえのようで
   あたりまえでない
   みつどもえのいのちのドラマ

         よかったね
         ありがとう
         見守り続けた人々と繰り返される会話

   そのただなかに
   愛の天使が微笑んでいる
   ボクちゃんと生れたよ
   これからよろしくね


夫婦

   何十年も夫婦できたのに
   わかりあっていないことだらけ

         ああーこの人は
         こういうとこがあるのだと
         驚きと発見の連続だ
         喜びもあれば落胆もある

   子供たちが自立し
   ふたりきりの生活になると
   むきだしの性格がぶつかりあい
   時々衝突を生む

         アダム(夫)のあばら骨から
         イブ(妻)がつくられた
         ふたりは一体なのだと
         悔い改めていると

   不思議なものだ
   夫がにこにこ
   何事もなかったかのように
   話しかけてくる


未来へと (孫の成長を喜ぶ)

  日に日に輝きを増し
       活動しはじめた小さな生命
  君たちは何をみつめているの
       みつめる向こうに何がみえるの
  君たちが見えるもの
       触れるもの味わうもの
   全てが探検であり挑戦であり
       恐れを知らない冒険の旅の始まりだ
  きっともう
       私には見ることのできない
   不思議な未知の世界を眺めているよね

  バアちゃんと呼ばれる心地よさ
       幸せという名のかたちを
  運んできてくれた君たち

  神の恵みあふれる中で
       老いていく者から成長していく者への
  命のバトン
       その重みは無限の可能性を秘め
  未来へと
       祈りをこめて続いていく


もうすぐ97歳になる夫の母を見舞う度に、こちらが元気をもらう。

ありがとう


やあーおかあさん
手を振り上げてごあいさつ

   あなたたち元気で何よりね
   母の笑顔がはじけてる

    笑い渦巻く中で
    家族写真を見せながら
    よもやま話に花がさく
    力強く 私の手を握る母


わたしは 子供がいて幸せ
   孫も ひ孫も たくさんいて 幸せ


至福の時間は あっという間

またくるからね
と私たち

身体を大切にするんだよ
   と母

おかあさん
それはこっちがいうセリフ
と夫

またまた笑いあって お別れです

ありがとう おかあさん
あなたから
元気をもらって 帰ります



アーちゃんが、洗礼を受けた。 彼女のお母さんは、「私の願いは、彼女が、主が備えられた豊かな人生を喜んで全うすることです。」と感想を述べられた。

慰めの子

礼拝に行くと
慰めの子が待っていてくれる
アーちゃんだ

そのアーちゃんが洗礼を受けた
    わたしは神さまを信じています
    これからも
    神さまとともに生きていきます
     と
    真実で力強い信仰告白は
     凛として決意に満ちていた

聖歌隊で
まっすぐに神を見上げて
喜びながら賛美する歌声が
ひたむきに神に向きあう姿が
いつもわたしの心を慰めてくれる
神の臨在を証ししてくれる

主よ感謝します
慰めの子を教会にあたえてくださったことに

    アーちゃん
    ともに手をつなぎハレルヤと
    歌いつつ歩んで行こう






「私の余生は、あなたを支えるために使いたい」と、いってくれた亡き母。

母が好きだった紫つゆ草。面影をたぐり寄せた朝。


紫つゆ草

   紫つゆ草がつぎつぎ咲きだした
   小さな庭のここかしこに
   柔らかな雨に打たれて
   薄紫の花びらがふるえている。

   母はこの花が好きだった
   花の色がステキなのよ
   そういいながら笑顔で株分けしてくれた
   長い年月を経ても
   今年も変わらず咲いてくれた

   おかあさん
   わたし生きています
   だいじょうぶ
   あなたの娘はしっかり生きています